創立60周年記念 座談会 (平成25年10月3日)

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新生指針としての「武内イズム」

「武内イズム」とは   吉本会長

 

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 平成5年5月の「北海道建設新聞」インタビュー記事で、当時横関建設工業株式会社の社長であった武内さんがこんなことを語っておられました。
一公共事業を請け負うという幸運に恵まれ、儲けたお金で高い車に乗り、フンゾリかえっているが、そんな建設業者は社会から見たら裸の王様と同じだ。現に地域からは、金だけ出せといわれ、智恵を出せとはいわれていないのがその証拠だ。もっと地域を学び地域を愛し、地域になくてはならない会社や経営者にならなくてはいけない一
 私はこの記事を読み、人生観が大きく変わるほどのインパクトを受けました。難しく賢そうな言葉ではなく、実に平易な言葉で語られていました。正直ショックでした。でもとても快いショックでした。このままでいいのかという問題意識を実に明快に示され、その解決方法まで具体的に授けていただいたと感じたからです。
 以後、私は「武内学校」門下生に立候補し、「武内イズム」啓発運動の機関車役を担い、自らも学び、私自身が感じた開放的な快さを業界の皆様にも広げたいと思ってきました。
 武内さんの学びと運動に向けた選択と言葉は、実にわかりやすく私の頭と心のなかに浸透していきました。頭だけではなく心まで浸透したのです。心に響くのは武内さん自身の人格でした。誰よりも年上であるのに、誰よりも子供心を持ち、人に対して思いやりで包み込むような、大きな、やさしい人でした。
 そのやさしさは特に、これから責任を担う若い人々に向けられていました。ここにお集まりの建世会、あなた方のような若者です。「もっと時代を学べ」「もっと地域を学べ」 「もっと己(おのれ)を学べ」といい、そこから「問題意識を持て」と。「この問題意識こそが、苦労を苦労でなくする最大の武器だ」と言っていました。
 だからこそ、武内さんはさまざまな分野の学びを起こし、若い人それぞれが違う問題意識を持つことに、顔をクシャクシャにして喜んでおられました。学びの第一歩をいろいろな面から用意してくれました。問題意識さえ持てば、自ら解決に向けて動きます。
 ここから夢が生まれ、ビジョンになります。次に用意されたのは「交流」でした。問題意識のある者同土が交流すると、自分だけで組み立てたビジョンが鍛えられるからです。すごい洞察力です。
 こうして鍛えられたビジョンに対して、我々に次の段階として示したのは、「自ら率先して走れ」ということでした。武内さんを取り巻く多くの人々は、その後ろ姿を見て思ったはずです。「世の中の酸いも甘いもわきまえ、自ら目を輝かせて熱く走っている」と。そして誰もが「ついて行きたい」、あるいは「自分もこうありたい」という気持ちを抱くのです。

 

 私は「武内学校」門下生第一号として、身近で10年間同じ夢を見てきました。その10年間を語れば、皆さんに伝えたいことは山ほどありますが、私自身が武内さんにはなれません。せめて武内さんが我々に伝えたかったことを、私なりに言うとこういうことです。「いろいろなことを学び」「問題意識を持ち」「交流し」「率先して一歩前へ」という段階以外に、問題解決の王道はないということです。最後に、武内さんが提唱された、同友会羊蹄山麓大学で語られた内容の要旨をご披露いたします。

 

1.企業の経営方針
 企業経営者にとって地域づくりは、企業経営と同時に進行すべき重要な課題である。
2.経営者の姿勢
 ①フロンティア精神で新しいものに挑戦しよう。
 ②ものまねでない創造力を働かそう。
 ③特定の分野でその地域 No.1を目指せ。
3.問題意識
 ①「人と違うこと」を常に発想する。
 ②「新たな問題」に常に挑戦する。
 ③「おやっ」という直感にこだわる。
4.問題意識の視覚
 ①このやり方でいいのか?
 ②ダメだとすると、どんな問題点があるのか?
 ③どんな対処の仕方をしたらよいのか?
 ④ではこうしよう!
5.問題解決の行程
 ①早く情報を得る。
 ②自ら意識改革を。
 ③この先どうなるかという先見性。
 ④決めたら行動。
6.地域づくりの視点
 ①地域の人材を育て、魅力を創造し、基幹産業からの経済活力の発展創出。
 ②誰もが安心・安全・快適に暮らせる生活空間の形成。
 ③歴史的・文化的資産や景観の保全、魅力に富んだ品格ある街並み。
 ④広域で連携しながら、一つでも具現化しようとする努力。
7.地域づくり10の行動規範
 ①自分の「まち」に愛情を持てるか。
 ②一歩前へ出る気概があるか。
 ③評論家で終わるなら、最初からやるな。
 ④一人一人がテーマを持て。
 ⑤いいことは仲間をつくって行動せよ。
 ⑥「三人寄れば文殊の知恵」を大切にせよ。
 ⑦最初から行政に頼ることは考えるな。
 ⑧失敗は成功の母だ。気にするな。
 ⑨異業種との交流は大切だ。
 ⑩トップはなんでも一人で抱え込むな。
 
 こういったことが、まちづくり理念であり、哲学でした。 「10年偉大なり、 20年恐るべし、 30年歴史なり」とも言っていました。それは人材育成に関しての言葉です。つまり、人が成長するための教育には、それほど時聞がかかるという意味でもありますが、逆に、教育が社会的成果となると「偉大」となり、「恐るべき存在」となり、誰もが愛せる「歴史」となるという意味だと私は理解しています。学ぶことが、社会にとっても、企業にとっても、そして、自分にとっても何よりも重要だということですね。
 本日お集まりの皆さんのなかには、直接「武内イズム」に触れた方も触れない方もおられますが、ぜひ、「武内イズム」という座標軸を頭と心に刻んでいただければと思います。なぜなら「武内イズム」には強要や強制は微塵もなく、自由な地点に我々を導く教えだからです。特に若い方にとっては「保護されて与えられた自由」から「自ら勝ち取る自由」への教えだからです。
 私には事業拡大を教えてくれる多くの先輩はいましたが、武内さんは人として企業として誇りを持つことを諭してくれました。心から感謝をし、あらためてご冥福をお祈りしたいと存じます。
 本日の座談会ではさまざまな問題を議論しますが、その都度「武内イズム」に照らしながら、私も口を挟ませていただきたいと思います。

 

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