創立60周年記念事業
パネル展「地域インフラを考える」
■ アンケート結果解析(統計)
1.パネル展示について
<総計>
①「興味を持った」「もっと詳しく知りたい」を合わせると95%となり、一般にインフラへの興味を引き出す働きをこのたびのパネル展は充分担ったといえる。
<年齢別>
② 「30代」-「80代」の「興味を持った」率は80%以上で、この年齢層にインフラへの理解が浸透していることを示している。これは社会的に責任ある年齢層であるからこそ、インフラの重要性を認識している証左といえる。
③逆に「O代」-「20代」における「もっと詳しく知りたい」率は20%以上と高率となり、「大切な 気がするので詳しく知りたい」というニーズが潜み、今後のインフラ教育の重要性が浮き彫りにされ、課題として指摘できる。
<性別>
④「もっと詳しく知りたい」の性別では男性が少し上回っているのは日本の文化史的には当然だが、女性の社会進出が加速されてきた背景からあまり顕著な差ではなくなっている。むしろインフラの重要性への認識に男女の差がなくなりつつあると思われる。
<アンケート会場別>
⑤顕著な違いは小樽での「興味がない」率が高いことである。小樽は近代初期から国費を投入してイ ンフラが築かれてきたことから、現代では「あって当たり前」意識になり、背景の歴史認識や感謝の気持ちが希薄と考えられる。この体質は明らかに依存体質であり、脱却すべき課題と指摘できる。
⑥同様に札幌・倶知安での興味度が高いのは、札幌は北海道経済の中心地であり、全国を俯瞰できる経験から客観的にインフラ認識が高いこと、倶知安は振興局所在地であることが原因と思われる。したがって現在はインフラに関する正しい情報提供と、大切なインフラを一人一人がどう認識するかという議論を喚起させる時期と指摘できる。
2.分野別興味
<総計>
①群を抜いて高いのは「災害」。これは3.11や今般特に多い異常気象から来る災害ニュースの影響といえる。本来自然災害に安心できる地域などはないといってもいい。地震や台風が少ないからといって安全が保証される訳ではなく、むしろ少なかったからこそ起こる可能性が高いともいわれている。東日本大震災は決して対岸の火事ではないのである。歴史に「もし」がないのは「後悔先に立たず」を意味するのであって、後悔しないためには自らの地域に例えて防災対策を講じる必要性が指摘できる。
②「農業」「河川」に関する興味度が低いのは直接的な恩恵を感じていない理由であり、決して自然や生活や産業にとっての意識の低さを表わすものではない。したがってこの分野の啓発は今後重要な課題と指摘できる。また「道路」「港湾」は都市型インフラの代表、「農業」「河川」は地方型インフラの代表であることから、一般のインフラへの関心は都市型志向に強い意識が反映されている。
<年齢別>
③「20代」〜「60代」における「災害」への興味度は20%以上で、いわゆる生産年齢層にとって災害は重要な認識となっている。したがって防災議論をしっかり行い、地域ごとの防災対策を講じていく転機であることが指摘できる。
④「農業」への興味において「o代」「70代」「80代」が高い。「o代」は食物への興味と,思えるが、「70〜80代」は農業が生産の基盤であった時代を経験しているからと思われる。ここに高齢者による農業教育も課題と指摘できる。
⑤「維持」ではどの年代層も10〜12%代でブレがなく均等であることから、インフラ認識における10%は、確実に維持への重要性を示している。この傾向は「地域活動」にもいえ、地域活動をしながらインフラを維持する建設業の姿勢は、今後の最低限の基盤と指摘できる。
<性別>
⑥男性の興味度は「災害」「国道」「港湾」の順だが、女性「災害」「港湾」「国道」と少し異なる。これは背景として海があることへの美的感覚や旅行形態への憧れの反映と思われる。
<アンケート会場別>
⑦札幌・岩内では「災害」であるのに対し、倶知安では「国道」がトップを示している。とはいえ倶知安でも「災害」への興味は低いわけではない。倶知安の「国道」興味は、北海道では最も国際観光に成功し、先端を走っているソフトのありようから、国道整備の重要性を感じていると思われる。すなわち道路整備というハードは、物流や人流のありよう(ソフト)によって存在意義を持つことの証左である。ここに地域ごとのソフトについて学ぶ課題が指摘できる。
3.災害時の建設業の活動
<総計>
① 災害時の建設業者の緊急活動を半数以上の方々が認識している事実は、貴重な反応といえる。滅多に起こらない緊急事態において、建設業者が縁の下で活動していることが認識されるほど、防災意識が一般に浸透していることが浮き彫りになっている。この事実は「あなた方建設業者の無償の緊急活動には敬意を表しているのだから、地域の防災対策におけるリーダーシップを是非とってほしい」というエールともいえよう。これまで表舞台に出ることを控えてきた業界であるが、防災の先兵として地域住民の安全を守る働きが期待されていると指摘できる。
<年齢別>
② 認識率が高くなるのは30代以降であり、40代以降は軒並み半数以上を占めている。恐らく3.11以前であれば10〜20%程度の認識であったものが、いまや2人にl人が認識している。さらに社会の中にあって30代以降は責任感を自ら植え付けていく世代として、緊急時の情報を入手していると思われる。このことから地域防災対策を行動に移すのは今しかないということが指摘できる。
<性別>
③ 女性より男性が緊急時の現場を把握しているのは当然だが、すでに女性も3人にl人が認識しているほどに増加していると推定できる。このような高率は今後の建設業界の表舞台への入口としてしっかり把握する必要がある。
<アンケー卜会場別>
④ 過半数割れしているのは札幌のみで、ほかの会場では過半数を確保している。これは、都市部においては、建設業者の活動があまり目立たないためではないかと考えられる。
4.パネルの効果
<総計>
① 「よく理解できた」が過半数を超え、「もっとPRすべき」は40%を超え、合わせて92.7%と圧倒的多数がこのパネル展に評価をくれたことになる。「よくわからない」に対しては、難解な専門用語を使用したことを反省する必要があり、今後の活動の課題と指摘できる。
<年齢別>
② 「50代〜70代」の層における「もっとPRすべき」は40%以上で、合計での高率を牽引してくれている。この層は社会の仕組みを熟知した年齢であることから、このたびの建設業自らが主催した内容を評価すると同時に、「その通りなのだからもっとインフラの大切さをPRすべき」という応援にも反映されている。つまりこの度のパネル展は業界の自慢に映らず、インフラの大切さという事実をしっかり認めくれたといっても過言ではない。
③ 「よくわからない」が過半数を占めた「10歳以下」は当然と言えても、専門用語の処理には課題が残る。
<性別>
④ 「よく理解できた」のは男性が女性を上回ってはいるものの、女性がインフラに理解を示す層が増加してきていると推定できる。さらに「もっとPRすべき」に関しては女性の方が高率で、これは「インフラが大切なことは理解しつつあるのだから、もっと正しい情報を提供してほしい」という前向きな意識と考えていいだろう。
<アンケー卜会場別>
⑤ 「よく理解できた」率が過半数を超えているのは札幌以外であることは、地方ほどインフラの重要性を理解する土壌が整っていることの反映と思われる。逆に札幌が「もっとPRすべき」で45%という高率であることから、都市部においても「インフラが大切なことは理解しつつあるのだから、もっと正しい情報を提供してほしい」という前向きな意識が潜んでいると考えられる。
<課題抽出>
インフラ一般
●インフラ教育は社会教育の上位に位置づけられる転機
●「あって当たり前」意識からの脱却
●インフラに関する正しい情報提供と大切なインフラという意識を啓発
●一般(小学生以上)にもわかりやすい説明
●高齢者(経験者)による農業教育の強化
●「地域活動」をしながらインフラを「維持」する建設業の姿勢は今後の最低限の基盤
●地域ごとのソフトとハードの関係の学習
防災対策
●防災対策を地域として、また一人一人がどう認識するかという議論喚起
●防災の先兵として地域住民の安全を守る
●建設業界の緊急出動の微細な体制強化
●地方と地方、都市と地方の防災対策連携